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県内33市町村の消費者行政アンケート調査から(2008年度調査速報)
今、消費者として望むこと

神奈川県の消費者行政を考えるシンポジウム実行委員会

(事務局団体 神奈川県消費者団体連絡会)

平成16年6月に消費者保護基本法が『消費者基本法』として生まれ変わり、日本は消費者行政の先進国から40年遅れて、ようやく『消費者の権利』が認められることになりました。その一方で、権利を認められた消費者は、その「自立」と「自己責任」が過度に強調されることになり、市場原理政策のもと、国及び地方ともに「消費者保護」政策を次第に転換し、消費者行政から撤退を始めました。

一方神奈川県では、そのような動きに加えて、地方分権の名のもとに「苦情処理は市町村の仕事」であるとして、これまで県を中心に実施してきた消費生活相談の窓口を平成10年から順次、各市町村に移管し、県立消費生活センターの統廃合や江ノ島商品テスト室を閉鎖するなど、消費者行政からの撤退をより明確にしてきました。私たちは、このような消費者行政の衰退に危機感を持たざるを得ない状況です。

さて、こうして神奈川県での「県」から「市町村」に委ねられた消費者行政が、私たち消費者にとって本当に充実した満足のいくものとなっているのかを検証するべく、私たちは、平成11年から神奈川県内各市町村の消費者行政担当窓口の協力を得て、継続的にその実態についてのアンケート調査を実施してきました。

消費者行政の大きな転換期となる今、私たちはこの調査から見える実態を更に分析することにより、消費者として「市町村消費者行政の充実・発展に向けた提言」をいたします。

アンケート調査の実施

調査方法

郵送による全数アンケート調査

調査時期

2008年9月

調査対象

神奈川県33市町村

回答数

 〃  31市町村(10月18日現在)

分析方法

市町村を人口規模により以下の4つに分類し、地域間格差についての分析を加えた

大規模市 = 人口39万人以上(n=5)     

横浜、川崎、横須賀、藤沢、相模原

中規模市 = 39万人未満19万人以上 (n=5)

平塚、小田原、茅ヶ崎、厚木、大和

小規模市 = 19万人未満9万人以上 (n=6)  

鎌倉、秦野、伊勢原、海老名、座間、綾瀬

町 村部 =  9万人以下(n=15)   

逗子、三浦、南足柄、葉山、寒川、大磯、二宮、中井、大井、松田、山北、箱根、湯河原、愛川、清川

*逗子、三浦、南足柄は「市」 開成・真鶴は未回収

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アンケート結果

1.消費生活相談

冒頭で述べたとおり、神奈川県では地方分権の流れの中で、これまで県を中心に実施してきた消費生活相談を、平成10年から各市町村に相談窓口を設置する方針に切り替え実施してきました(いわゆる『神奈川方式』)。これにより、相談窓口は平成9年当時と比較し、1.7倍に増え、県民の利便性は増大したというのが神奈川県の認識です。

本当に、各市町村の相談体制は充実したのでしょうか?

(1)相談窓口の増加と相談件数の増加

神奈川県発表のデータによれば、消費生活相談の件数は、

平成10年 41,036件 (内訳 県:23,711件 市町村:17,325件)

平成19年 71,226件 (内訳 県: 8,547件 市町村:62,679件)

*「平成19年度神奈川県内における消費生活相談概要」より

となっており、県センターの統廃合と市町村相談窓口の増加を反映し、平成10年から平成19年の間、県の受託件数が減少し、市町村での受託件数が圧倒的に増加しています。

一方、相談件数の合計をみると、平成10年当時に比べ、平成19年には1.7倍に増加して、確かに窓口を住民の身近な市町村に置いた事で利便性は増したともいえますが、窓口数が1.7倍に増えたのと平行して相談件数が増加しただけで、窓口あたりの受託件数には大差の無いことがわかります。

(2)各相談窓口の実態

次に「相談窓口の一週間の開設状況」を2008年度調査からみてみると、

・週5日以上  14自治体(36%) ・週3日〜4日  4自治体(11%)

・週1日〜2日  4自治体(11%) ・他市に委託  11自治体(33%)

となっています。このうち、市町村の規模分類で町村に分類される16自治体に限ってみると、うち「11自治体が他市に委託している」と回答し、町村部では「その7割が独自の相談窓口を開設することが困難である」という現状がわかります。

(3)消費者行政担当窓口の位置づけと職員の専任・兼任の割合

各市町村の消費者行政担当窓口は、各自治体でどのように位置づけられているのかを、市町村の規模別に担当部署の名称から探ってみました。 (数例を表示)

大規模

Y市

経済観光 局

消費経済 課

 

 

K市

経済労働 局

消費者行政センター

 

中規模

0市

市民 部

暮らし安全 課

消費生活 担当

 

H市

市民 部

公聴相談

公聴相談 担当

小規模

E市

総務 部

地域推進 課

防災安全 係

町 村

N町

総務 部

地域推進 課

防災安全 係

 

Y町

― 

産業観光 課

商工観光 班

上記から、「消費生活」行政は大規模市においては、「課」の段階に位置づけられているのに対し、中規模市になると「係・担当」の段階に下がり、さらに小規模市では、「消費生活」等の表現が消え、「相談」窓口の一環として消費生活が位置づけられるにすぎないことがわかります。

そして、町村部になると、消費者行政は、「防災安全」や「商工観光」業務の中で付随的に扱われていることが読み取れます。

実際に、各自治体で消費者行政に携わる職員の勤務状況について尋ねたところ、大規模市では、「すべて専任もしくは兼任」であるのに対して、町村部では、14の自治体のうち13の自治体(93%)が「他の業務との兼任」で消費者行政を担当しているとの回答でした。

(4)窓口相談員数と年間相談件数

下記の図は、独自に相談窓口を開設している自治体において、窓口に配置する「一週間の延べ相談員数」と、「年間相談件数」の関係をグラフにしたものです。

配置する相談員の数が増えれば、それだけ相談件数も増加し、逆に窓口開設が週に1日〜2日でのべ相談員数が少なければ、相談件数にもおのずと限界があるということが、顕著に現れています。

*横浜市と川崎市を除く

週のべ相談員数と相談件数のグラフ

(5)消費生活相談 総括

上記のデータから、『神奈川方式』への移行後は、たしかに市町村の相談窓口の数が増え、一見、消費者にとって利便性が増したように見えますが、現実には「市町村間での格差が拡大している」ことがわかります。たとえば、横浜市や相模原市などのように、平日だけでなく土日にも相談体制を備えるだけの体力ある自治体がある一方、消費者行政そのものが、産業観光などの業務と兼務で位置づけられ、しかも、独自の相談窓口すら持つことが出来ず、他市に相談業務を委託せざるを得ない町村部が、まだ県内の3割以上の自治体にのぼることもわかりました。

この現状からは、神奈川方式が、相談体制の充実に十分な寄与をしたとは、とても言い難いと考えられます。同じ県民として、地域間格差を看過することはできないのではないでしょうか。

 

2.消費者学習・啓発と消費者団体支援

相談窓口・相談体制が充実し、消費者被害の救済が十分になされるようになれば、消費者行政は十分な役割を果たしたといえるのでしょうか。消費者自身の意識を高揚させ、「自覚ある消費者として行動できる知識」を一人一人の消費者が身に付けることができて初めて、「自立した消費者」ということができます。そのための消費者学習・啓発等事業は、行政の大きな責務であり相談業務とともに車の両輪ともいえる大きな役割を果たしています。

現状では、十分それが果たされているのか、アンケートの回答から以下に検証してみます。

(1)消費者行政予算とその内訳

33市町村全体の消費者行政予算の額と、各事業内訳を平成15年と平成20年で比較してみました(単位万円)。 

 

平成15年

平成20年

H20/H15の比較

消費者行政予算合計

70,048

49,214

70%

相談事業

36,795

34,405

94%

学習・啓発事業

3,820

2,619

69%

消費者団体支援事業

459

299

65%

消費者行政予算全体が平成15年と比較して、平成20年では7割に縮減され、予算からみても消費者行政の後退が伺われます。内訳を見ると、相談事業費の減少が、他の事業費の減少に比べて少ない事がわかります。これは、近年増加する相談に対応するために、相談事業予算を可能な限り維持する必要があり、逆に、消費者行政予算全体が減らされる中、学習・啓発、団体支援事業予算を減らさざるを得ない現状が見えてきます。

そして、このことは、市町村の規模別でみると、より顕著に現れてきます。

(H20/H15の比較)

大規模市

中規模市

小規模市

町村部

相談事業

88%

124%

153%

146%

学習・啓発事業

51%

79%

95%

36%

消費者団体支援事業

142%

40%

28%

32%

比較的余裕のある大規模市では、相談事業の比率が減って、団体支援の費用が増加しているのに対し、中規模以下の市町村では相談事業にかける予算を増やさざるを得ない実態がわかります。

つまり、もともと相談体制が十分でないにもかかわらず、年々増加する相談に対応するためには、予算を相談業務に集中させ、学習・支援事業がなおざりにされている現状が見え、ここでも市町村 間の格差が浮き彫りにされてきます。

(2)学習・啓発事業として行ったこと

次に、消費者学習・啓発事業として実施したものをたずねたところ、

1チラシ・パンフレット等の作成(87%) 2講座・学習会等の開催(81%)

3広報誌の活用(74%) 4モニター等の設置(26%)

などの回答がありました。平成14年のデータをみると、講座・学習会の開催(87%)、モニターの設置は51%との結果が出ており、費用や手間のかかる事業をしだいに縮小し、経済効率のよい事業へと転換していることがわかります。しかし、作成されたチラシ・パンフレット等がどれだけ消費者市民への啓発となっているかは今後さらに検証する必要があります。

また、講座・学習会のひとつとして、消費者被害未然防止講座についての2007年度の開催状況を尋ねました。高齢者向けの被害防止講座については、大規模中規模小規模市では100%が実施、町村部でも73%の自治体が実施していました。近年、急速な勢いで増加する高齢者対象の消費者被害に対しては、どの自治体も危機感を募らせていることが推察されます。一方、消費者リーダー向け講座については、1自治体が実施したと回答したに留まりました。

(3)団体支援活動として行ったこと

自治体が主体となって、「地域の消費者団体の交流会・情報懇談会を行っているか」尋ねたところ、「行っていない」自治体が58%で、市町村が中心となって消費者団体のネットワーク化をするだけの力がない事がわかり、自由意見などから、むしろそのネットワーク化の要として「県にその役割を期待している」ことが分かります。

消費者団体への支援活動としては、

1情報提供(29%)  2研修・集会の場の提供(23%)

などが上位で、この順位は平成14年当時と比較してかわらないものの、平成14年は情報提供が48%、研修・集会の場の提供が43%と比べると、支援が希薄になっていることがわかります。

(4)消費者学習・団体支援及び消費者啓発 総括

各自治体は、消費者行政予算を減らされる中、増大する消費者被害に対応するため、その予算配分を相談業務に充当せざるを得ない状況にあり、消費者啓発や団体支援事業が手薄になっていることがわかります。

実際に、「消費者団体支援予算を全く計上していない自治体」が実に21自治体(68%)にものぼり、市町村行政においては、団体支援活動は崩壊したともいえるかもしれません。

 

3.消費者行政の重要課題と「消費者庁」に望むこと

(1)消費者行政の重点課題              

(平成20年の順位)

平成20年度

平成19年度

平成16年度

1位 消費者意識向上のための啓発事業

61%

61%

62%

1位 県の広域的専門的支援

61%

46%

41%

3位 市町村における人員・予算の確保

45%

39%

38%

3位 県の財政的支援

45%

49%

49%

5位 市町村における人材育成

39%

21%

8%

(2)「消費者庁に望むもの

1位.地方消費生活センターの法的位置づけと財政支援

18(58%)

2位 全省庁に対して強力な総合調整・勧告権・調査分析機能をもつ

18(58%)

3位 消費生活相談員の人材育成と処遇改善

15(48%)

4位 「表示」「取引」「安全」等の一元化と消費者のための法令等整備

14(45%)

5位 国民生活センターを消費者庁の機関とし、充実・強化を図る

10(32%)

6位 迅速な情報収集・分析、公表により被害の救済と拡大防止を図る

8(26%)

7位 消費者教育啓発、消費者団体支援により消費者力強化を図る

7(23%)

 

4.アンケート結果からみえてくるもの

消費者行政予算の減少、消費者行政そのものの衰退が、全国的な流れとなっている中で、神奈川県も例外ではなく、消費者行政は年々衰退をしています。しかし、県内市町村の実態をアンケート結果からみると、県の支援などを必要とすることなく、独自の事業を展開し活発に消費者施策を推進している政令指定都市を始めとする大規模な市がある一方、県西部の町村部を中心として、まだまだ消費者行政そのものの位置づけすら十分できていない自治体もたくさんあることが分かります。

また、増加する消費者被害とその相談対応に追われ、相談事業の比重が大きくなり、消費者啓発・団体支援事業がなおざりにされる傾向もわかります。

しかし、多くの自治体担当者は、これからの消費者行政における最重要課題は「消費者意識向上のための啓発」であるとしており、この意識・傾向は従前と変わらぬことは大変興味深いところです。

また、「消費者庁」に望むものを尋ねると、「地方消費生活センターの法的位置づけと財政支援」と答えた自治体が最も多く、まだまだ相談体制すら十分できていない現状で、国に対してその整備を強く望んでいることがわかります。しかし一方では、消費者啓発や団体支援については、「消費者庁」の任務とは考えていないことも興味深く、国と地方自治体の役割を明確に区別していることが伺われます。つまり、消費生活センターの整備・相談体制の充実を国が強力に後押ししてくれれば、地方自治体は自ら消費者啓発等の事業を積極的に推進していけると考えているのではないでしょうか。

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今、消費者として望むこと〜地方消費者行政の充実に向けて〜

市町村における消費者行政の確たる位置づけと地域間格差の解消を求めます。

1.市町村消費者行政の確立

各市町村は、消費者問題を行政課題として位置づけ、消費者政策・施策の策定を行い、専任の職員を配置するなどその強化に努めてください。

2.市町村相談体制の充実

すべての市町村において、消費生活相談を週5日以上開設してください。そのために、国は消費生活センターを法的に位置づけ財政的支援をするとともに、県は市町村が単独で5日間開設できない場合は近隣市町村の協力体制を構築するなどその実現のために支援を強めてください。

3.消費者啓発事業の充実・消費者団体支援の強化

県や市町村は、消費者市民の「消費者力向上」のため学習・啓発事業を充実させるとともに、消費者団体がその要となって、消費者の意識高揚に寄与する一方、市場監視機能も十分果たせるよう団体活動への支援を強化してください。

多くの消費者が問題意識をもって適切な行動すれば、消費者相談は格段に減少するとともに、悪質業者などは淘汰されていきます。しかし、適切な行動をとるためには、事実をよく理解し問題を把握するための「学習」が必要です。

消費者行政を抜本的に考え直す今、相談現場・相談体制の充実はもちろん大切ですが、一人でも多くの消費者市民が『自立した消費者』として行動することができるよう、行政による抜本的な消費者啓発・支援体制の強化を、私たちは強く望みます。

*なお、今回は「市町村消費者行政に的を絞った要望・提言」となっています。市町村消費者行政の充実強化のためには、市町村の努力はいうまでもありませんが、国・県の支援が不可欠です。また、国・県の消費者行政の充実強化も求められます。その点から、消費者会議かながわとして、平成20年8月21日付、松沢県知事あて「消費者庁新設と市町村消費者行政充実のための要請書」を提出しておりますので、別添「要請書」もご一読ください。

 

神奈川県の消費者行政を考えるシンポジウム実行委員会

【連絡先:神奈川県消団連気付 045-473-1031】

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