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2016年2月21日

「新たな所得連動返還型奨学金制度の創設に関する第一次まとめ」に対する意見

神奈川県生活協同組合連合会
専務理事 丸山善弘

1.論点:議論のすすめ方について

意見

議論の進め方や有識者会議の構成、問題点把握など「新たな制度の創設」のためには不十分です。

理由

学生の過半数が奨学金を利用せざるを得ない社会状況となっており、その返済に苦しむ人が増え、結婚や出産、子育てにも影響を及ぼしています。利用者の返済資力に応じた無理のない返済制度を考えるべきです。今回の所得連動返還型奨学金制度有識者会議の構成を見ると、研究者と金融機関のメンバーだけで構成されており、利用者側の代表(当事者や保護者)、法律家などの参加はありません。またヒアリングすら行わずに議論が進められています。実態に触れることなくて本当に現行の奨学金制度が抱える問題を解決する方向で制度設計ができるのか疑問を持ちます。また、議事録や資料の公開も遅く、とても国民に開かれた議論を行っているとは言えず、有効な解決をしていけるのか心配です。

 

2.論点:所得に応じた無理のない返済制度について

意見

所得に応じた無理のない返済制度は、ぜひ実現すべきものです。特に、「今後の検討課題」として挙げている「有利子奨学金への導入」「既に返還を開始している者への適用」「給付型奨学金制度の創設」は重要であり、早急に検討をして頂きたいものです。

理由

奨学金の返済に苦しむ人が増え、結婚や出産、子育てにも影響を及ぼしています。利用者の返済資力に応じた無理のない返済制度こそ実現すべきです。

 

3.論点:必要な予算の確保について

意見

「奨学金度全体を安定的に運用」「返還額が確保される制度」などと、奨学金事業の採算性が強調されている記述が目立ちますが、制度設計にあたっては返還者の負担軽減につながるように充分な予算を確保すべきと考えます。

理由

奨学金返済困難の原因のおおもとは、雇用環境の不安定化・低賃金にあります。その対策を無視して、高騰した教育費の負担を個人にのみ負わせるような現行の奨学金制度の考え方は、もはや限界と言わざるを得ません。また日本の高等教育に対する公財政支出はOECD諸国の中で下から2番目と報告されています。教育の機会均等を確保するため、もっと教育関係予算を増やすべきと考えます。

 

4.論点:最低返還月額について

意見

年収「0」でも月額2,000〜3,000円を払わせる考え方には反対します。

理由

2,000円〜3,000円は低所得世帯の数日の食費に相当する額であり死活問題です。低所得者の生活実態を十分に把握の上で協議がされるべきです。このような考えが出されるのは、そもそも当事者やその相談にあたっている法律家等からのヒアリングを行い、議論に反映していないからではないでしょうか。

 

5.論点:返還猶予の申請可能所得および年数について

意見

年収が300万円を超えるまでは、申請を要せず期限の制限なしに猶予すべきです。

理由

猶予の申請可能年数は通算10年(または15年)とされていますが、猶予期間が終わっても状況が改善していない場合、返済を続けるのは無理があります。

奨学金を返還するのは本人であり、申請時の保護者等の年収が300万円以下かどうかによって、猶予期間が10年/無期限と扱いが変わるのは不合理です。そもそも「マイナンバーで所得を把握する」としているのですから、申請などせずとも年収が300万円以下の場合は返還を求めるべきではありません。「必要なら猶予を申請すればいい」と言うのは、現在の救済制度の周知度の低さや運用の実態(猶予の可否は機構の裁量次第)を把握することのない議論です。

 

6.論点:返還期間について

意見

最長の返還期間(一定の年数または年齢)を設けるべきです。奨学金利用者を一生借金漬の人生にしてはなりません。

理由

生涯非正規で、その退職後でも返還させるというのはあまりにも酷ではないでしょうか。返せる見通しのない負債は一定の時期で免除しなければ、生活再建もままなりません。返還猶予は支払いの先延ばしに過ぎません。先が見えないことへの不安、や終わりが見えない苦痛をいつまでも負わせるべきではありません。返還期間が長期化すれば、返済の重荷が次世代(返還者の子ども)の子育てや教育に必ず影響し、貧困の連鎖を助長することにつながってしまいます。

また返還免除するには法律改正が必要で、2017年度からの導入が間に合わなくなるとの理由で「現行通り」が適当とされていますが、制度導入を急ぐあまり充分な制度設計の議論ができないというのは本末転倒だと考えます。

 

7.論点:個人主義または家族主義について

意見

家族主義ではなく、個人主義を採用すべきです。返還額は、返還者の収入のみによって決定すべきであり、扶養者の収入を合算すべきではありません。

理由

事実上、契約当事者でない扶養者にまで返済を強いることになります。家制度を廃して個人を中心に据えた現在の家族法の基本理念に反するものであまりに前近代的です。

扶養者のマイナンバーの提出は任意とされていますが、所得連動型の返還制度を利用したければ提出せざるを得ず、実質的な強制です。

 

8.論点:保証制度について

意見

人的保証は廃止すべきです。機関保証を利用する場合の保証料は引き下げるべきです。

理由

主債務者の将来の返済能力がわからない状態で貸与され、返還期間が長期に及び保証人が高齢である場合が多いことから、人的保証は廃止すべきです。ただし、機関保証を利用するのであれば、保証料を支払う者の数や保証料総額は相当な増加が見込まれるため、返還者の保証料は引き下げるべきです。

 

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